最終防衛線

おれたちの失敗
Open Menu

愛情練習

 其れは戯れか、血縁、愛情の確認か――
 学生運動の盛んな時代、学園を占拠し、先公をも跳ね除けて生徒を束ねる男がいた。幼い時から天才と騒がれ、中学時代は体操競技で鳴らし、人よりも才能を持て余した少年は突然、今まで積み上げてきた全てを捨てるかのように革命の赤い炎を燃やし始めた。
 勉強をさせても運動をさせても何でも一番になるような少年だった。

 神隼人は革命の炎と共に倫理観を燃やしていた。
 校舎の空き教室に『特殊作戦室』なるものを作った。実質的な校舎の次席であった従兄弟の竜二と綿密に作戦を考えたいからというのは表向きの理由で、実際は倫理観を棄てた隼人と竜二が倫理感に囚われずに睦合う部屋だった。それを知るものは校舎の中には誰もいない。『特殊作戦室』の全容を知った者は、一人残らず全容を知らぬまま校舎を去るか、その場で総括され絶命するかの二つに一つだった。

 隼人は『特殊作戦室』で次なる『敵対組織』を全滅させるための作戦を練っていた。理科室のような薬品の多い場所に追い詰め、全滅させる。かつこれを自分たちの仕業ではなかったかのように片付けることまでを本作戦として考えていた。隼人は革命の名の下、己の正しさを誇示させるため、狂乱で戦い血肉を見る度に、いつからか性的興奮を伴うようになっていった。竜二は聡明な隼人の計画を一度で理解できず、不明点を一つ一つ訊き出していく。隼人は仕方がないな。と色を含めた双眸を竜二に向け、概要を?み砕いて説明をしてやる。
「まずは逃げ場をなくす。あの学園は木製二階建で尚且つ理科室が割と外から出やすい場所にある。劇薬が多いからな。そこへおびき出して固める。向こうの数は二十人程度だから、こちらの方が人数は多い。タイマンで潰せる奴は先に潰してまとめて詰み上げておけ。それでもかかって来る野郎がいるなら、隣の理科準備室にメチルアルコールがある。そいつを火炎壜みたくコーラの壜なりに入れて投げつけてもいいが、有毒だから直接相手にぶちまけちまってもいい。ただ向こうでやり合うにも、ウチの連中でもそんなの見分けがつかねえとは思うから、ヤバそうな薬なんかはとにかく相手にブチ撒いてしまえ。これで大抵は潰れる。最終的に同志がおおよそ外に捌けたら俺が壜詰めした鉄粉に火を投げ入れて、相手の校舎ごと爆発させてしまうって寸法だ……しかし、この手の薬液は火の廻り方が早い。こちらにも犠牲が出ないとも言い切れない戦いになるだろう」
「大胆不敵と言うべきか、無茶をやるよな」
「お前は少し慎重になりすぎている、竜二。そりゃあ下手すると俺たちまで爆発するかもしれねぇがな、敵も味方も死ねる奴は今死なせてやった方がそいつの為だと俺は思っている」
 机をかち合わせて向かい合っていた隼人は敵対している学園の見取り図にペンで書き込みながら、クツクツと不気味に笑う。竜二は何かに気付いたように隼人の名を呼んでいた。
「来る……」
 隼人は『特殊作戦室』から出て廊下を駆けて行く。十メートルほどのところに一人の生徒がいた。
「貴様ァーーーーーー!!!!」
 その場で跳躍し、目前のバリケードを前方ムーンサルトで飛び越え、間合いを詰めた隼人と生徒が対峙する。生徒はヒィ、と声を掠めた。そのまま隼人は生徒の胸倉を掴みかかった。
「『特殊作戦室』のルールは知っているな?」
「し……知りません……ッ!! つい最近入ったもので……ェ……!!」
「なら教えてやろう。一般生徒は『特殊作戦室』の半径十メートル以内に近づくなァ!! 総括だ!!」
「――ッ!?」
 隼人は胸倉に伸ばした手を喉笛に移し、そのまま壁に押し付け、両手で生徒の首を絞め続ける。怯むことなくその手を緩めず力を入れていく。生徒の息は絶え絶えになるも、やがて潰えた。
「俺からの餞別だ。この校舎で志を共にできず、とても残念だ」
 生徒の腹を蹴り、虚になった身体は五メートルほど空を舞い、転がっていった。

「竜二」
 ふらふらと戻ってきた隼人は譫言のように従兄弟の名を呼び、『特殊作戦室』の鍵を掛けた。
「邪魔が入ってしまったな……」
 色の乗る隼人の声に、竜二はとても弱かった。何が正しくて、何が悪いのか。血の繋がりがある従兄弟だから、でも四親等だからいいのか。それ以前に男同士だ。それを言ったら「まるで出来の悪い少女漫画みたいだよなあ」と隼人が竜二の横で嗤いながら初めて事を成した時のことを思い出す。
『――竜二にならあげてもいいぜ』
 竜二を男として上に立たせてやったのは隼人なりの気遣いなのか、興味本位だったからか、未だ竜二は隼人の心の奥底がわからない。ただ、隼人は竜二に抱かれることに抵抗はなく、寧ろそれを楽しんでいるようにも見えた。
 来いよ、と空き教室の隅に不自然に置かれたベッドに隼人は靴を脱ぎながら転がると詰襟のホックを、釦を上から外していく。
ったく……と竜二も満更ではない様子で近付き、その様子を隼人の上からじっと見ている。つい数分前に人が一人死んだというのに、隼人のスラックス越しに屹立しているものを見てしまうと、竜二もすべてを諦めたように隼人の上に跨り、カッターシャツの釦を外してやる。俺も狂ってるのかなあなんて思いながら白い肌を晒してやると、隼人はビクッと一瞬震える。革命派閥『革新派』の首領、神隼人が、俺の手中で、人に見せないほどの色を含めて喘ぐ。隼人は竜二を抱き寄せてキスを求めた。隼人の左腕は竜二の右腕を掴み、自分の屹立しているものへと導く。竜二は布越しに伝わる熱さに触れると、自分の顔にまで一気にその熱さが伝播してきたようでもあった。焦りながら隼人のスラックスを片手で外し、ずらすと熟れ始めた隼人のペニスが勢い良く飛び出してくる。竜二はあられもない従兄弟の姿に目を眩ませながら、自分のスラックスも脱ぐ。自分のペニスと隼人のソレを合わせて兜合わせにして扱くと、隼人は嬉々とした喘ぎ声を漏らした。
「はぁっ……んんっ……きもち、いい、イイッ……りゅ、りゅう……じ……ぃ……」
 唇と唇の間から声が漏れるたび、隼人のペニスがびくりと大きくなっていくのを竜二は自身の右手で感じていた。上からも下からも粘膜が触れている。竜二は堪らなくなり舌をさらに深く絡めていった。息継ぎの仕方も分からないなりに場数ばかり踏んでしまった。相手が男だから、いや、隼人であるから多少は無茶が出来ているのかも知れないと、気持ち良さに溺れる頭で竜二は薄らと考えていた。これが女だったら情緒がないとか下品だとか言われるんだろうか。情緒も品も要らない。二人だけでいられるのならば、それだけで良かった。
 互いのペニスから先走りが溢れる。キスの狭間から唾液が溢れ、隼人のカッターシャツを濡らしていく。酸素が足りなくなってきた竜二は、舌を離すとそのまま隼人の首筋から鎖骨を舐め、キスマークを付けてみる。ちゅ、と音だけで隼人はびくりと反応する。拒まれていないどころか、身体は何度も求めてくる隼人が愛おしい。拒まれていたらそれこそ一番始めに総括を求められていたはずだ。隼人もまた竜二に総括を求めずにいた。血の繋がりを理由にしてると言えばそれまでだ。出来の悪い少女漫画に夢を見ているのかも知れない。弱みも何も、幼い頃から手の内を全て見せている。今更深くなろうが、一緒に風呂に入ることとあまり変わらない。だから隼人は竜二を求めているのだが、竜二はそれを知らない。知らなくていい。
「――っ、ああ……っ!! ……ぃ、そこ、いいっ……!!」
 竜二は舌を胸に這わせ、まだ淡いピンク色をした隼人の乳首を甘噛みする。柔らかな乳首が興奮で少しずつ硬さを見せ初める。白い肌が瞬く間に羞恥に朱く染まる。右手に添えられた脈動が一段と大きくなり、濡れた手で隼人の雁首をキュッと絞めるよう握ってやると、堪らなくなったのか隼人は竜二の腕を掴んでいた左手で自分のペニスを扱き出す。
「だめ、……りゅうじ、イク、イかせて……!!」
「俺の手に全部射精しちまえ」
「……あっ、ああっ、射精る……あ……あああぅ、っーー!!」
 はち切れんばかりに膨れた隼人の亀頭に竜二は右手を添え、親指で隼人の亀頭を丁寧に弄ってやる。それを繰り返すうちに、、竜二の下で隼人は全身をひくつかせ、そのまま身を弓なりに逸らせて竜二の右手に精液を放った。竜二は内心優越感と隼人の色香に浸っていた。隼人の精液さえ愛おしい。どうしてしまおうか。達するにはまだ刺激が足りない竜二は隼人に到底及ばない頭で考える。ぢゅる、と右手に溢れんばかりの精液を舐め回す。美味いモンではないが、隼人の体液であると思うと舐め回すことに抵抗はなかった。
「はあっ、あ、あんっ……りゅう、じ……そんな……」
「俺はまだイけてないんだが……」
 余韻に浸るように隼人は肩で息をする。
「そうだな……。じゃあ、おれが竜二のちんこしゃぶるのと、おれのナカで射精すの、どっちがいい?」
「どっちもって言ったら?」
「……欲張りだな……」
 隼人の声は呆れつつも嬉々としていた。徐に起き上がって、竜二と正面で見合う。硬さを保ったままの竜二のペニスを躊躇いなく隼人は口に含んだ。隼人が自分のペニスを咥えている様に目が眩むような気持ち良さが脳から足先まで突き抜ける。溢れる先走りを逃さないように啜っていく。前髪を掻き分けた隼人の手は竜二の根本から陰毛を掻き分けて、支えるように収める。
 ここで一発射精しちまっても、もう一回くらいは余裕で出来るだろう。隼人は器用に竜二のペニスを喉奥まで挿れては戻すを繰り返している。喉奥で竜二の脈動を感じる。苦しいのか、その目に浮かぶ涙に独占欲を覚える。俺だけにしか見せない隼人のいやらしい顔つきに、竜二は思わず隼人の後頭部を少しだけ押し付けると、隼人の声帯が震えた。びくり、とそれが竜二のペニスに伝わり僅かな快感を齎した。あと少し、あと少しでイケそうだ。喉が締まりかけている。緩急を付けて前後させると膣のように喉奥が蠕き竜二のペニスを絶頂へと押し出していく。
「は、隼人ォ……!! で、射精るッ……!!!!」
 竜二は隼人の喉奥に精液を放った。隼人は脈打ちながら熱く喉を過ぎる濁流を受け入れることしか出来なかった。
 全てを飲み込んだ隼人はすかさず竜二のペニスから顔を引き剥がした。興奮に溶ける唾液と竜二の残滓が唇から溢れ、噎せた。
「ーーこれでおあいこってか?」
「お次は挿れてくれよ。両方する約束だろう」
 人を総括する時のような鋭い眼光が竜二に向けられるものの、声はかつて革命を夢見る前の幼さと期待を孕んでいた。
「そうだったな」
 竜二は壊れ物を扱うような手つきで隼人をベッドにひっくり返し、仰向けにさせた。置きっぱなしにしていたローションを自分の手に溢れさせた。陶器のような肌、体操で鍛えた胸板は厚くなりつつある。隼人は強請るように長い脚を開いてみせた。実際初めてではないし、体操で鍛えた男だから、壊れないことはわかっているのだが、その手はどうしても丁寧に扱ってしまう。竜二は体温で暖めたローションに塗れた右手を隼人の最奥にあてがった。人差し指が容易く隼人のナカへと誘われる。
「は……あぁ……りゅ、りゅうじ……」
 物足りなさそうに隼人が喘ぐ。竜二は恐る恐るという手つきで少しずつそこを解してやる。
「……せ……、ゆび、ふやせ……よぉ……」
 指一本だけでは物足りなさを知ってしまった出口であった入り口と、ふたたび勃ち上がろうとしている隼人自身が目に付く。赤いペニスと陰毛のコントラストが竜二にはいやに眩しく映り、目前の欲が勝った。指を更に二本増やして隼人の其処をさらに蹂躙していく。ナカを擦るたびに嬌声を上げる隼人に呼応して、竜二のペニスも硬くなりつつあった。
「隼人……イイか?……」
「あっ……そこっ!!……ひっ、きもちぃ……!! りゅうじ、そこ……ひっ、グイグイされるのイイっ……!!」
 三本の指が隼人の前立腺を攻め立てる。泣きそうに乞う隼人の表情にかつてのあどけなさを見た竜二は、隼人の耳元で囁く。
「欲しいか?」
「挿れて……!! 俺のナカに、竜二のちんこ挿れてぇ……!!」
「……ああ、挿れてやっからな」
 その一言で射精しかけたが、何とか抑えて竜二は体勢を整える。柔らかくなった隼人のアナルがローションで濡れ、いやらしく口を開く。竜二は心臓が飛び出そうなくらいに緊張しつつも、自分のペニスを隼人のアナルへと少しずつ埋めていく。埋まるたびにうぅ、くっ、と声を漏らす。

――俺だけの隼人。そう言われて隼人が嫌がるのは俺が一番良く知っていた。でも、今、俺だけを見て、俺に抱かれている。戯れかも、偽りかもしれないが、今だけは俺だけの隼人でいて欲しい――

 俺はふたたび隼人の唇を塞ぎながら、少しずつ隼人のナカで動いてみる。隼人もそれに応え、少しずつ舌を深く埋めていく。俺が動くたび、隼人は声を震わせて、ナカまで締め付けてくる。それが愛おしくて、俺も自然と奥の奥まで挿れて、上からも下からも隼人を満たしてやろうと躍起になっていった。
「っ……りゅう、じ……りゅうじ……!! いいっ……いいっ……!!」
 キスの合間から聞こえる隼人の声に、竜二は腰を動かすたびにイキそうになるのをグッと我慢しながら隼人の粘膜を擦る。竜二は唇を胸板に移し、隼人の右の乳首を優しく吸い上げ、左手で乳首を摘み、柔らかく抓ると、いい、いいと譫言のように漏らしながら身も後孔もびくびくさせてしがみ付かれる。隼人の長い爪が竜二の背に食い込む。そんな痛さは、傷となり痕となる。隼人に求められた証のようで、竜二は拒むどころか嬉々として受け入れる。腹に硬くなった隼人のペニスが当たる。

――もう、イきそうだ。
「隼人ォ、一緒に……イカせてくれないか……?」
 竜二の懇願に隼人はこくと頷くと、竜二は枷を外すように抽送を強くすると、隼人がびくびくと身を震わせる。
「隼人ォ……!!!! 射精すぞ……!!」
「りゅ、竜二ィ……!! あっ、あっ……イッ、イくっ……!!」
 隼人のアナルにキュッと締め付けられ、竜二は隼人のナカで果て、竜二の腹に精液をぶちまけた。竜二は抜かずに暫く隼人のナカで余韻を味わっていた。


***


「――良かったぜ、竜二」
 隼人は色香の乗った視線を向けて竜二の腕の中に収まっている。竜二は自分の腕の中に収まる隼人を抱きしめる。隼人は心地よさからか拒みはしなかった。
 きっと誰のものにもならない従兄弟を、今だけは誰にも邪魔されずに独り占め出来る。隼人はこんな行為を出来の悪い少女漫画と嗤うが、竜二は少女漫画よりも下卑た自販機のエロ本みたいだよな、と思い、ずっと二人だけの時間が続けばいいのにと叶わぬ夢を願いながら、隼人の額にキスを落とした。

【了】

2025/11/28 UP
▲top