provocare-挑発
ユーコン基地・男子便所
ヴァレリオは余剰冷却水の廃棄をしている最中であった。自身の電磁投射砲(レールガン)の砲身はまだ昂りが抑えられているにも拘らずそこそこでかい。ヴァレリオはその心地よさから軽く目を閉じ、息を吐く。だばだばと音を立て、放物線を描きながら冷却水は小便器へと流されていく。すると、どこからか自身の放水音に混じって呻き声のようなものが聞こえてきた。
全くオナニーでもしてやがるのか、誰か入ってるのわかるとちょっと気まずいよな、などと思いつつもヴァレリオは特に気には留めなかった。便所の個室でオナニーくらい自身も身に覚えがありすぎるため、そういうことにいちいち構うような男ではないのだ。
「ああっ……ュ、ユウヤ……!! すき……」
ヴァレリオは聞き覚えのありすぎる名を耳にした矢先、前言撤回と言わんばかりに冷却水廃棄を終えると、自慢の電磁投射砲をしまうなり個室の奥のドアにそっとすり寄った。
ぎ声と共にぐちゅぐちゅと濡れるいやらしい音に聞き耳を立てているとヴァレリオも少しばかり股間にキ始めていた。個室の奥の男はまだ俺に気づいてねぇみてえだな。さあどうするか、わざとドアを叩いちまうか、そのまま無視するか。
「ああーっと、その声はクゼ少尉じゃねぇっスかァ!! 奇遇っスね!!」
ヴァレリオの答えは勿論と言わんばかりの前者であった。わざとらしくドンドンとドアを叩く。うっ、という呻き声のあと、一瞬の沈黙ののちにトイレットペーパーをカラカラと回す音が聞こえてくる。
(アイツ、イったな……)
更に暫くして、大便器の流水音とともに恐る恐るレオンが出てきた。
レオンはヴァレリオの顔を見るなりこのマザーファッカー、と吐き捨て足早にこの場から去ろうとしたが、ヴァレリオはすかさずレオンの右腕を掴んで止めた。流石にイタ公にマザーファッカーはまずかったかとレオンは一瞬青ざめた。
「お前さン、彼女持ちの癖にユウヤで抜くなンざ、なかなか業が深いじゃねぇの」
「しつけえな、誰で抜こうが俺の自由だろ。いい加減にしてくれ。にしてもジアコーザ少尉は他人の便所の個室を覗くという悪い趣味をお持ちのようで」
「俺はションベンしてたらダチの名前が聞こえたから、ちょっと気になって聞いてたまでだ」
「フン、何がダチだ、お前如きにユウヤのことが解ってたまるかよ」
レオンはヴァレリオの腕を振りほどき、足早に去っていく。
「あっ、おい!」
去っていくレオンの顔が耳まで紅く染まっていたのをヴァレリオは見逃さなかった。
クゼ少尉もユウヤのように不器用で、目が離せなくて、弟のように可愛がるだけだったらまだ良かったのかもしれない。それよりもほんのちょっとだけ踏み入った好奇心が、ヴァレリオの心を突き動かしていたことにまだヴァレリオ自身は気付いていなかった。
インフィニティーズ・ハンガー
一日の任務を終え、ヴァレリオはヴィンセント達とリルフォートのバス停に途中まで付いていくふりをして、こっそり抜け出しインフィニティーズのハンガーに足を運んでいた。ハンガーには一見誰も居ないようにも思えるが、ヴァレリオは自然に声をかける。
「ようクゼ少尉、偶然だな」
ヴァレリオはへらへらと笑いながら濃紺のF-22Aに見蕩れていたレオンに接近する。レオンは偶然と言いながらこの時間に自分がここにいることを見透かされているような気がして少しばかり恐怖を感じた。
「偶然にしては出来過ぎている気がするが、気のせいじゃないか? ジアコーザ少尉」
レオンは自機のペットネーム・猛禽類(ラプター)の如き鋭い眼光でヴァレリオを睨み付けて離さなかったが、レオンがどんなに見上げて睨みつけたところで、ヴァレリオには無意味であった。相も変わらずあはあは笑っている。
「あー、三日くらい前までお前の彼女のケツ追っかけてたンだけど、インフィニティーズのハンガーにマークしてるうちに飽きちゃったンだよね。大丈夫、ヤってないから安心しろ、っていうかヤる前から飽きるって意味解ンねぇなあはは」
ヴァレリオは軽薄な口調でレオンに説いた。
「え、あ……、俺も意味わかんねぇよ。ていうかシャロンに飽きたんならこのハンガーに来る理由ももうねえだろ、とっとと帰れよイタ公」
ヴァレリオは演技めいた大仰な素振りでレオンに右手を差し出す。その様は差し詰め王子様と形容するのが相応しかった。
「残念、俺が今興味あるのはクゼ少尉、貴様なンだ」
その顔つきは先刻と打って変わって真面目なものだった。ヴァレリオからの突然の告白めいた台詞にレオンは困惑する。
「やめてくれジアコーザ少尉! おれはユウヤ以外の男に抱かれるつもりはない!」
レオンは昂った感情をぶつけるようにヴァレリオの右腕を叩いた。
「クゼ少尉……」
「……いま、シャロンと付き合っているのもユウヤが愛した女を愛すことでおれもユウヤを愛していることと同義になる……いや、シャロンも好きだが、その……なんというか……」
正直レオン自身も何を言っているのかよく解らなかった。シャロンを愛しているのは事実、だけどユウヤのこともシャロンと同様、もしかしたらそれ以上に好いている自分が中途半端で嫌になることが度々あった。
「お前がユウヤもシャロンも好きなンは知ってるよ、アンタはさっきユウヤのことを想ってオナニーしてたし、俺がシャロンをマークしてた時もシャロンはお前のことをちゃんと信頼してるように見えた。でもな、好きな子ってのが一人増えようが二人増えようがそれはそれでいいじゃねえか。 好きな子の数だけ愛せばいい。だから俺は今お前とシたいンだ、駄目か?」
「…………好きな子が一人二人って……お前のようなイタ公なんかと一緒にされたくない」
「おいおい、人生一度きりなンだぜ。愛を謳歌せずに何をしろって言うンだよ? 戦術機に求愛した所で応えてくれるのか? 仮にアンタが俺の腕の中でユウヤって叫ンでも俺は全然構わないぜ?」
「…………」
先刻便所で見たときのように、レオンの顔が耳まで紅潮していく。ヴァレリオはお前かわいいなあとくすくす笑いながらレオンに半強制的にキスを求めた。
レオンはヴァレリオの唇が触れたと解ると、ぎゅっと眼と口を閉ざし拒否の態度を示した。ヴァレリオはそんなレオンに動じることなく腕を回し、レオンの尻の割れ目を掴むように強くがさつに揉みしだき始める。それに応えるようにレオンが全身をびくりと震わせる。その隙を突きヴァレリオはレオンの唇に割って入る。舌で口腔を弄られる感触に脳髄まで融かされてしまいそうになる。思うように息が出来ない。くるしい。けど、きもちいい。レオンがとろとろになりながら快楽を享受しているところに更に追い打ちをかけるようにヴァレリオの手がレオン自身に回る。ヒッと声帯を震わせるも声にもならない息を吐き出す。キスだけでここまで気持ちよくさせるなんて……悔しさと快楽の中で、レオンは既に自分の脚でまともに立っているのかさえも解らなくなっていた。
堪能し尽くしたのかヴァレリオはレオンから舌を離して伏し目がちに見つめる。窪んだ眼窩に添えられた下睫毛の長さにレオンは不意にドキッとする。ヴァレリオの舌からレオンの舌までいやらしさでねっとりと欲の絡んだ唾液が糸を引いている。レオンは快楽から抜け出せず足許が覚束なくなっていた。バランスを取ろうとして不意に前のめりになった所をヴァレリオの腕の中に収められ、更に弄られる。先刻よりも感じやすくなっているのかヴァレリオの指が動く度にレオンはやだ、やめてくれ、と否定の声を荒げるも色を含んだ声であるため説得力は薄れている。ヴァレリオはレオンの聞く耳を持たず触れる箇所全てがまるで性感帯にでもなったような触り方をしてくる。文字通り女慣れした男のそれであった。
「やめてくれ、ジアコーザ少尉……俺にはユウヤが…………!!」
ヴァレリオはレオンの耳を甘噛みする。
「じゃあ聞くが、お前さンはもうユウヤとシたのか?」
「………………お前に関係ねえだろ」
「まだか」
「…………、アイツが易々と戦術機以外に身を委ねないのは貴様も十分知ってるだろ! だから俺は毎日毎日ユウヤに犯されることを妄想しながら抜いているってわけだ…………あっ!!?」
レオンは自分の性癖を知らず知らずに曝け出しながらヴァレリオから逃げようと後退りしようとしたが、脚が覚束ないまま尻から崩れ落ちた。大丈夫か、と言いながらもヴァレリオは何の気なしにレオンに覆い被さり、そのままカーゴパンツのベルトに手をかけた。器用にベルトとカーゴパンツのファスナーを外したかと思えば、一瞬にしてレオンの下半身が露わになる。
「……ジ、ジアコーザ……しょう、い……頼む……やめてくれ……」
レオンの陰茎は半勃ちの状態で、既に先走りが流れる。レオンは自身の昂りを見つめ、右手を陰茎に持って行こうとするが、ヴァレリオに抑え付けられる。
「レオン、お前がこれからすることはオナニーじゃない」
ヴァレリオはレオンの両腕を抑えながらも先刻よりも更に優しく説く。レオンはヴァレリオから視線を逸らし、はあはあと色を含ませて呼吸している。
「……ユウヤ……おれの……ちんこ……さわって……」
レオンの右手がびくりと動くが、ヴァレリオが抑え付けているため陰茎まで届くことはない。
「すまないレオン、お前さンには悪ぃが、こうでもしねぇと俺が何も出来ねぇンだ」
ヴァレリオは剥ぎ取ったレオンのカーゴパンツからベルトだけ引き抜くと、レオンの両腕を頭の上に上げた状態で一纏めにし始めた。
「な、何だっ!?」
「いいかクゼ少尉、アンタはこれから俺とセックスするンだ。不在のユウヤに犯されながら一人でオナニーするのとは訳が違う。心配すンな。お前がユウヤとちゃんと本番を迎えるために俺と一緒に練習するんだ、いいな?」
イタ公に縛りつけられるという屈辱を受けても尚、レオンはその事実とヴァレリオから目を背けたままだった。それを見かねたヴァレリオは優しくレオンの顎を自分の方へと向けた。
「……だから嫌だって……っあ!?」
「アンタが俺に興味ねェのは分かっている、けど今だけは俺を見て欲しい」
レオンにはヴァレリオの台詞がどことなく虚勢を張っているようにも聞こえた。もしかしたら本当にこいつはおれのことが好きなのかもしれない。だがレオンにしてみればそんなことはどうでもよかったのだ。俺はシャロンの彼氏であるがユウヤのことも好き、その事実があれば他の事象なんざどうでもよいのだ。レオンが悶々とあれこれ思考を錯綜させている間に、ヴァレリオもカーゴパンツを下着もろとも脱ぎ、臨戦態勢へと突入しようとしていた。レオンは目前で露わになっていくヴァレリオ自身の大きさにヒイ、と息を飲む。レオンのそれよりは一回りでかいだろうか。既に硬く、文字通り努張しており、雄としての存在を誇示していた。だがヴァレリオ自身はそんな下半身とは対照的に柔らかい表情に満ちていたが、意識は当然のように下半身に直結しており、躊躇いを見せることなくレオンの陰茎をしゃぶり始める。
陰茎から感じる口腔の熱さにレオン自身は更に硬くなる。その反動でうっ、とヴァレリオが不意に欲の混じった唾液とともにうめき声をこぼすが、そんなことはお構いなしに攻めていく。レオンは自身の恥辱に耐えかねて、ひたすらに声を押し殺しているが、そんなかすれた喘ぎ声や吐息が聞こえてくる度にヴァレリオ自身もまた興奮に身を擡げていた。ヴァレリオの陰茎からは先走りが零れ、アナルは興奮する度にひくひくと僅かに口を開ける。その様子はレオンからは見えないが、笑いながら自身の陰茎を貪るヴァレリオの姿を見てなんと気の狂った男だ、と快楽と同時におぞましさに襲われる。
「ひっ……!」
ヴァレリオの舌は陰茎から下がり、レオンの秘められた箇所へと延びる。硬く閉ざされたそこに触れる濡れた感触に思わず声をあげた。ヴァレリオの予想よりも遙かに容易くそこは舌を受け入れた。
「っ……あっ……」
レオンは苦しむかと思いきや、そこから感じられる心地よさに思わず喘ぎ声を漏らす。
ヴァレリオは十分に出口を濡らすと、レオンの呼吸に合わせてゆっくりと指を埋めてそこを入口へと変えていく。指であっても存外すんなりと受け入れたが、ヴァレリオのテクニックよりもレオンの慣れに依る部分が大きい。指はずぶずぶと奥まで挿入っていく。僅かに扇動する内壁のじんわりとした熱さと蠢きに早く挿入したくてたまらない。
「お前さん相当ケツ使い込ンでるみてぇだな。 本当に毎日ユウヤのことを思いながらアナルオナニーキメてンだ」
ヴァレリオはきしし、といたずらに笑う。
「るせぇ、おまえのチンポ挿入れる為に開発したわけじゃねえよ!」
レオンはヴァレリオに楯突く。ヴァレリオはレオンの中に埋めた指をしれっともう一本増やしつつ問う。
「簡単に二本目挿入っちまったけどよ、お前さんはチンポのほうが欲しいみてぇだな?」
「ひぁ!?」
雄膣を更に拡げられる感触に自然と声が漏れる。だがレオンは首を横に振り抵抗する。
「でもよレオン、そういうけどお前のアナルはチンポを求めてるし、俺ももう挿入れたくてたまらねぇンだ」
「俺はお前のチンポなんて欲しくねえ……!! ユウヤじゃなきゃ嫌だ!」
ヴァレリオはレオンのアナルから指を引き抜き、自身の陰茎をレオンに見せつけるように扱いて昂らせる。びくびくと手の中でヴァレリオの陰茎が脈打つ。時々はあ、と息を吐き、時折潤滑液を欲して指を舐めながら、淫美な顔つきで誘いかける。これがおれの中に……とレオンはヴァレリオ自身をまじまじと見つめて慄く。
「俺様に捕まっちまった時点でアンタに拒否権はねぇよ、諦めなクゼ少尉」
ヴァレリオは体勢を整えて少しずつ陰茎をレオンのアナルへと埋めていく。レオンは張型でも指でもない本物の陰茎の感触にびくりと体を仰け反らせた。
「ひっ……ああああああっ!! 生のちんぽキてるううう!!!! ユウヤ!! もっと!! もっとおお!!!!」
これが本当のユウヤ・ブリッジスであればどれだけよかったことか。レオンは知らず知らずにユウヤの名を呼ぶ。ヴァレリオはレオンに覆い被さり本能のままに激しく腰を打ちつける。アナルオナニーで慣らしてあるとはいえ、レオンの雄膣は処女そのものであり、びくびくとヴァレリオの陰茎を締め付ける。
「あはっ! まるで処女みてぇな締まり具合じゃねえか。最高だぜレオン!!」
びくっ、とレオンの中でヴァレリオの陰茎が脈打つ。ユウヤユウヤと名を呼び続けるレオンの処女雄膣を自身の型を覚えさせるように突く。
「処女で悪かったな……ファッ……ク……!! くっ……!!ああっ!!」
「いいかレオン、これがセックスってやつだ。オナニーなんかよりも全然イイだろ……! あっ!ああっ!!」
ヴァレリオは恍惚の表情を浮かべながら自身をぐいぐいと最奥まで深く沈めていく。
「ひああああっ!!??」
レオンはびくりと大きく震え、ヴァレリオを更にきつく締め付けていた。今までのオナニーで感じたことのない感触に襲われる。
「ふふ、お前、ここがいいみてぇだな」
ヴァレリオはにぃ、といやらしく口角を上げた。前立腺に触れていたのだ。煽るようにそこだけを撫でつけるように小刻みに責めてみる。
「やだっ!! そこ……だめぇ……! ユウヤっ!! 頼む……!」
ヴァレリオは挿入してもなお自分の存在を打ち消すレオンにどことなく哀れさを感じながら腰を振っていた。いっくらコイツがユウヤを好いているのはわかっているけど、こうもユウヤユウヤ言われるのはなあ。たまらずキスの距離まで顔を近づけた。ヴァレリオの緑色が滲む長い黒髪がレオンの頬を撫でる。
「クゼ少尉」
わざと階級付きでレオンを呼ぶ声には厳しさが混じっていた。ヴァレリオはレオンの群青に自身を映そうとするが、レオンは未だに視線を合わせようとしない。俺はヴァレリオ・ジアコーザだ。これでもまだ目前の男がユウヤ・ブリッジスであると貫き通すのか。お前を貫く陰茎はこの俺の陰茎であってユウヤの陰茎ではない。ほれ、アンタの雄膣は俺の形を覚えていってるぜ。全くユウヤも罪な男だねぇ。ヴァレリオはユウヤに嫉妬していながら、レオンがひたすらにユウヤを求めるこの状態にひどく興奮を覚えていたのだ。
「…………」
「お前さんはこの後に及んでもまだオナニーを続ける気か」
「………………」
「俺がどんだけお前の雄膣中で気持ちよくなっても、クゼ少尉自身がユウヤユウヤ言って一人でイキかけてたら、それは俺のチンポでオナニーしてるのも同じじゃねえのか?」
「……………………」
「俺はアンタとセックスしに来たンだよ。だから……」
「…………………………」
「せめて俺と……セックスしてくれよ……」
バカかよ俺。今時クソ映画でもこんな台詞ねえぞ。あってたまるかよ。ヴァレリオの顔はいつになく紅潮していた。
「…………ジアコーザ……少尉……つっ!!」
「ひあっ!!??」
レオンはヴァレリオの翡翠を覗く。ようやく自分の名を呼んでくれたレオンに驚き、びくりと雄膣中で陰茎が膨張する。ヤリチンクソ野郎が可愛い顔すんじゃねえよバーカ、とレオンは心中毒づく。もう大丈夫だと見込んでヴァレリオはおもむろにレオンの腕を解放する。
「もういいのか」
「セックスしてくれって言ったのは俺だからな。もっと俺に触れて欲しい……」
「バッカみてぇ」
「俺はバカなンだよ、しゃーない」
毒付きながらもレオンはヴァレリオの腕に手を回す。ヴァレリオは嬉しそうに目を細めた。既に昂りは最高潮にまで達していた。熱を孕んだ陰茎は雄膣で蕩け、その感覚は快楽として二人の脳髄に叩き付けられる。
「あっ、あっ……ああぅ……レオン……レオン……!! 射精すぞっ!!!」
「ジ、ジアコーザ……しょう、い……! キて……!」
ヴァレリオはレオンに呼応するようにレオンの雄膣に精液を注ぎ込む。
「レオン……俺は……」
「ああああああああああああああ!!!!」
レオンは勢いよく射精した。黒いBDUに精液が飛び散る。数時間前にオナニーしたばかりであるというのにその量は尋常ではなかった。
ヴァレリオは満足したように自身の陰茎を引き抜くと、最低限の処理だけしてカーゴパンツを穿く。レオンは自身のアナルから溢れ出る精液に焦燥しながらヴァレリオを睨み付ける。
「…………勘違いするんじゃねえジアコーザ少尉、俺は貴様に抱かれたが、貴様に対して一切その気なんてない。俺が欲しいのはいつだってユウヤだけ……ッ!?」
ヴァレリオはレオンの言葉を聞く素振りを一切見せずに自身のBDUをレオンに投げ付けた。
「そンな状態でシャロンの元には行けねェだろ、貸すぜ」
アンダーシャツ一枚のヴァレリオは早々にインフィニティーズのハンガーから去っていった。絶対にユウヤに処女を捧げると誓ったレオンのアナルからは無慈悲にヴァレリオの精液が零れ、BDUのジャケットはジアコーザ少尉に導かれて塗れていった自身の欲の痕跡がべっとりと白く残ったままであった。
レオンは自身のBDUとアンダーシャツを脱いで、ヴァレリオが残したBDUにそっと袖を通してみたが、肩幅も袖も一回りでかく、不格好でしかなかった。ヴァレリオの香水らしいきつい薔薇の香りがレオンの鼻腔をくすぐる。レオンは先刻までの情事を思い出し、陰茎に手を伸ばす。
「こんなモンまで渡しやがって……これで行ってもシャロンに怪しまれるっての…… BDUも……チンポも……でけーんだよ馬鹿野郎…………ッ!!!!」
***
POLESTAR・客席
「このヤリチンクソ野郎! いままでどこほっつき歩いてたんだよバーカ!」
「タリサやめなさい! 他の人もいるのよ! 迷惑でしょ!!」
1時間半もの大遅刻をキメたヴァレリオを待ち構えていたのはタリサの罵声だった。ステラの静止をものともせずタリサは延々とヴァレリオの耳元で罵り倒しているが、ヴァレリオはあーあーはいはいわかりましたよーお許し下さいタリサ様ーと謝る気もない声色で極めて適当に受け流している。ヴィンセントはいいぞもっとやれ!色男に制裁したれや!とタリサに加担し、ユウヤはいつもの光景なので普通に目前の合成肉を黙々と食べ続けている。ヴァレリオはちらりとユウヤの方を見やる。俺はさっきまでコイツのことを愛している男を俺は犯してきたンだ、と先刻の情事を思い出す。ユウヤの知らない所で、ユウヤを愛していると言った男の処女を奪ってきた。ぞわっとするような背徳感と興奮に襲われ、下半身は言わずもがなであった。
「なんだよVG、俺に振るなよ」
ユウヤは助けを求めてきたと思っているヴァレリオに、極めて普通に返した。
「ってか俺まだ何も言ってねェだろ!? あー、もしかして俺に気でもあンのかね?ブリッジス氏~あはあはあは!!」
ヴァレリオはなだれ込むようにユウヤの隣に座り、腕に肩を回し、丁度近くにいた店員に生ビールを頼む。
「あるわけねぇだろバーカ」
「ですよね~~~~~~」
きしし、といたずらに笑いながら来たばかりの生ビールを一気に飲み干す。そんなヴァレリオの目が、少しだけ悪意のような、妬みのような色を孕んでいた気がしたが、ユウヤは気にすることなくぬるくなったビールを一気に飲み干した。
【了】
2018/07/29
UP