最終防衛線

愛の狩人と確率時空
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ジアコーザ少尉の華麗なる血統と華麗なる邂逅と華麗なる即ハメ

 互いに出会ったばかりの彼らにとって、身体の関係に至るなんてこの時はまだ想像もしていなかった。
 ユーコンに来てから数日、ヴィンセント・ローウェルはVG――ヴァレリオ・ジアコーザの名を初めて聞いたにも関わらず何処かで聞き覚えのある名のように思えて仕方がなかった。着任祝いと称した飲み会の席で、ヴィンセントはヴァレリオと初めて会話をした。着任以来 挨拶程度に言葉を交わしてはいたものの、深く言葉を交えるのはこの時が初めてであった。
「VG俺さぁ、お前の名をどこかで聞いた覚えがあるんだよ……不思議だよな」
「トーネードじゃねえか? 俺のじいちゃん、設計にも関わってたらしいのよ。詳しいことは知らンがな」
 F-5E――トーネード。戦術機が好きで整備に志願したヴィンセントがその名を聞いたことがない訳がない。ボーニングに派遣されていた時に見た資料か何かでその名を目にしたことがあったのだ。
「そうだ!それだ!! 昔欧州機について調べてた時にその名を見たことあったんだよ!!お前がその設計者の孫か!!まあ~~~~こんなところでお会いできるとは光栄であります!!!!」
 ヴィンセントは嬉しそうに敬礼をすると、ヴァレリオの肩に手を回す。
「実際俺もイタリアじゃあトーネード乗り回してたンだ、こう言って貰えるとじいちゃんも嬉しいだろうな! 米国のギーク野郎もまだまだ捨てたモンじゃねえな! この出会いに乾杯!」
「「かんぱ~~~~~~い!!!!!!」」
 二人はジョッキを交わした。
 その後もヴィンセントは戦術機だけでなく軍用車から大衆車に至るあらゆる機械蘊蓄をヴァレリオにひけらかし、相当驚かせていた。欧州没落以降記憶の中に閉ざされていた在りし日のイタリアをヴィンセントが思い出させてくれたのだ。酒のせいもあって更に口の回りが良くなったヴァレリオも欧州の話をヴィンセントに聞かせた。
「サンタ・マリア・デラ・コンチェツィオーネとかすげえンだよ! 骸骨寺って言ってな……」
 酒に呑まれていたのはヴィンセントも一緒だった。休むことなく饒舌に語る唇、語る度に僅かに揺れる深緑掛かった黒く長い髪、深く窪む眼窩を彩る下睫毛――伊達男の色気に当てられたのだろうか。ヴィンセントはヴァレリオの耳元でそっと囁いた。
「VG、俺より先にユーコンにいるお前だからこそ聞きたいんだが……」
「なンだ?」
「この辺でヤれるところねえかな」
 不意にヴァレリオの衛士の勘が過る。こいつは俺を狙っていると。
「あるぜ。ナインローゼスって言って、リルフォートを越えた先に風俗街が並ンでンだ。なんだ、お前さンもそういうの好きなン? じゃあこの後俺と一発ヤりに行きますか!」

 飲み会も終わり、POLESTERの入り口で屯していたアルゴス小隊を上手くかいくぐり、ヴァレリオはヴィンセントと共にリルフォートのその先へと繰り出した。
「欧州機にはステルス機能は付いてない筈だが……イタリアといえども実力は確かなようだな」
「あンだけイタリアの話させておいてそらァねえよ」
「VGが一方的に喋ってただけだろぉ~ 面白かったけど!」
 POLESTERから更に進むとリルフォートとは明らかに異なる電飾に彩られた街が見えてくる。それこそがユーコン随一の風俗街、ナインローゼスだ。道行くカップルは男女だけではなく同性の者も数組見られる。最果ての地といえどもここもアメリカなのだ。 いつか行ったべガスの風俗街と変わらない風景にヴィンセントはどことなく安心感を覚えていた。
 ヴァレリオはヴィンセントの腰を抱き、煽情的に先の勘が正しかったのかを問う。
「なァヴィンセント、本当は俺が目的だったンじゃねえの?」
「え……? やだなあVGそんなわけねえだろ! 俺は可愛いねーちゃんと一発……」
 ヴィンセントの声色が僅かに上ずるのをヴァレリオは聞き逃さなかった。
「大丈夫、俺も欧州で散々喰われた。前線に男女の区別なんてねぇし、セックスだってそうだった。どうだヴィンセント、俺と一発ヤる気はねェか?」
 ヴァレリオはヴィンセントの髪を掻き上げ、そっと耳を甘噛みする。
「お……俺でいいのかよ? お前だって女のほうがいいんじゃねえの?」
「別に構わンよ。お前さンたちが来てからこっちも色々忙しくて女ともヤれてねぇし、この際野郎だって歓迎さ。折角仲間になったンだ、仲良くしようぜ」
 ヴァレリオの手がヴィンセントの股坐に触れるか否かの寸前でヴィンセントはヴァレリオの手を掴んだ。
「ここでヤる気か? VGはどうなのか知らんけど、俺に露出趣味はないぜ」
「露出ねえ……悪くねえな、じゃあ路地裏とかどうよ? 俺はもう我慢できねェ」
「えっ……何言ってんだ待てよVG!?」
 流石イタリア野郎、と呆れているうちにヴィンセントはヴァレリオを見失いかける。人の波を避けながら、数歩先に揺れる長い髪を目で捉え追いかける。脇の路地に入るとヴァレリオは既にカーゴパンツを脱いでヴィンセントを待ち構えていた。ヴァレリオの手中で徐々に血の気を増していくペニスにヴィンセントは慄いた。
「案外ここが穴場でよ、死角になるから気付かれねーンだぜ」
 先走りで濡れ、薄闇でも尚僅かな光を受けギラギラと薄ら輝くペニスに統一中華や日帝の長刀を重ね、更に息を飲む。一呼吸置いてヴィンセントはヴァレリオに問う。
「それを俺のケツにぶち込もうって気か?」
 恐怖から来る薄ら笑いが止まらない。俺は犯されてしまうのか。今更ながら軽率に誘ってしまったことをヴィンセントは後悔した。
「や……久々にぶち込ンでもらおうと思ったンだが、お前さンがその気じゃねえなら仕方ねェよな……何か、すまンな」
 そう語るヴァレリオの口調は何処か寂しげに聞こえた。――欧州で散々喰われた――確かに甘いマスクに鍛えられた若き肉体。ただでさえ野郎が少ないユーラシアでこんだけの上物はそうそういらっしゃらねえ。衛士であれば尚の事。お偉方のおっさん達にでも可愛がられていたのだろうかとヴィンセントは悪趣味だと思いながらも詮索していた。
「いいよ、俺がVG犯してやる。さっきもすげえ話聞かせて貰っちゃったし、礼?って言うのもおかしいかもしれねえけど、俺にさせてくれよ」
 欧州戦術機の一端を担っていた者の血縁者であったことだけじゃない。着任してから幾度か見た衛士としての技術、飾ることなく面白いことを語る様やノリの良さにも魅かれたのかもしれない。 ヴィンセントも自身のベルトに手を掛け、そのまま一気にカーゴパンツを下ろした。既にはち切れんばかりに勃起するヴァレリオのペニスに連れられるように、ヴィンセントのペニスも頭を擡げ始めていた。
「初めての奴にケツ向けてヤるのはつまンねえよな。これから共に戦っていく仲間なら尚のことだ。おし、座位で行こう」
 取り敢えず座れ、とヴァレリオはヴィンセントに指示する。ヴィンセントは言われるがままに腰を下ろした。ヴァレリオはヴィンセントのペニスを愛おしそうに見つめる。その色眼にヴィンセントは更に奮い勃たせた。
「お前さン見かけに寄らず初心なンだな。女遊びの一度や二度位ヤってそうに思えたンだがなあ……視姦程度でイかれちゃあたまンねえし、そろそろ本チャン行くか」
「俺初心じゃねえし! 女の子ともヤったことあ……ああああああっ!!!!」
 ずぶずぶと音を立てながらヴァレリオはゆっくりとヴィンセントを受け入れ始める。ヴァギナとは違う感触にヴィンセントは不意に喘ぎ声を漏らしていた。そんなヴィンセントをよそにヴァレリオは最奥まで飲み込むと、ヴィンセントの肩に腕を絡める。
「よし……全部挿入ったな。女とはシたことあるみてぇだけど、野郎は初めてか?」
 ヴァレリオはわざとらしく締めつけながら問いただす。
「ちんぽ突っ込んだのは……初めて……」
「ぶっ込まれたことはあるンだ」
「ま……まぁ……」
「俺が初めてって言うなら、尚更愉しませてやらンとな。着任早々互いに嫌な思い出にはしたくねぇだろ」
 ヴァレリオはそう言うと腰を動かし始める。初めはゆっくりと慣らすように上下に揺らし、勢いを付けて加速していく。
「あああっ!! ……や、やめろVG……!! そんなに激しくされたら……!」
 ぬぷぷ……といやらしい音と共にヴァレリオの腸壁の蠢きと腰の動きに囚われ、ヴィンセントは更に勃起させる。当のヴァレリオもヴィンセントが自身を更に昂らせるたびに声を荒げていた。
「……なあヴィンセント、チンポ触ってくれよ」
「あ……ああ……んん……っ……」
 言われるがままヴィンセントは腰の動きに合わせて上下に揺れるヴァレリオのペニスを手にすると、片手で裏筋をなぞるように丁寧に扱き始める。それを見計らいヴァレリオはアンダーシャツを首元まで捲し立てる。鍛えられた白い肌に強化装備の痕が薄らと残っている。その痕をなぞるように胸まで這わせ、乳首を捉えて弄る。
「っ……あ……はぁああ……チンポハメられンの久し振り……!! いいっ……いいぜっ……!!もっと……もっとハメてくれっ!」
「はぁ……、んっ……ああぅ……ふぅっ…………!!」
「乳首弄りながらケツマンブチ犯されンの……さいっこうっ……!! ん、んっ……ぁああっ!!」
 ヴィンセントはヴァレリオの管制が追い付かず声にならない声で返すことしか出来なかった。腰の動きについていけず、手中に収めたペニスを手放しかけた。
「ヴィ……VG激しすぎ……!! 俺、もうイきてぇよお……!」
「んっ……!! まだだ……まだ、だあっ……ああっもう少し……もう少しでイケそう……!!」
「ああああっ……ひっ……ひぃいいいいい!!!!!!」
 にちゅ、ずにゅ、とヴァレリオが腰を落とす度にヴィンセントは眩みそうになる。極めたいのに極められない辛さと快楽のせめぎ合いにもどかしさと言うには生温い感覚に苛まれる。
「んんぁああッ……やっぱ前立腺野郎のチンポで擦られンの好いっ……! すンげぇ気持ちいい……!!」
 ヴァレリオはすでに蕩け切った顔をヴィンセントの碧眼に映しながら語りかける。その間も快楽を求めて絶え間なく淫猥な音を立てながら顫動を続けていた。熱く迸るヴィンセントのペニスがヴァレリオの前立腺を掠める度にとろとろと先走りを零す。時々先走りを塗っては弄りを繰り返した乳首は更に深紅に染まり、ツンと天を仰ぐように勃っていた。
「はぁあっ……ヴィンセント……イくっ……イカせてくれ……!!」
 ヴァレリオはずぬぬ……とゆっくりと腰を上げ、ヴィンセントの亀頭スレスレまで引き上げると、そのまま120mm弾をブチ放すような衝動で一気に貫いた。
「「あっ……ああああああああああああああ!!!!!!!!!!」」
 ヴィンセントはヴァレリオのアナルにどくどくとありったけの精液を注ぎ込む。その勢いは暫く留まることがなかった。ヴィンセントの射精に呼応するようにヴァレリオは更に勢いを付けて射精していく。ビュービューと太く放物線を描いていく様は光線級のレーザー照射を彷彿させる。光線はそのままヴィンセントの胸元を直撃した。黒いアンダーシャツが白く染まっていく様にヴァレリオは興奮冷めやらないままヴィンセントの手首を掴み、萎え行くペニスから残滓を絞らせる。
「ヴィンセント……すまン……止まンねえ…………はぁ……はぁ……」
 勢いを失った精液は未だにぱっくりと開いた尿道からじわりじわりと零れていく。その度にヴァレリオはびくりと身体を震わせる。伏し目がちに自身を見つめる瞳に煽られ、ヴィンセントは更に追撃をかけるようにヴァレリオに吐精を続けた。
「ヴィ……VGっ……!! 好きだっ!!!!!!付き合って下さい!!!」
「えっ……あっ……? 俺は遊びだと思ってたンだけど……」
 突然のヴィンセントからの告白にヴァレリオは戸惑うばかりであった。ヴァレリオ自身見境なく性行為に走るものの本気にすることは滅多になく、大抵一夜の関係で終わっていたことの方が多かった。衛士である以上自分の死が明日来ても後悔しないために一線を引いていたのだ。
「なら遊びのセックスでいいから何度でも俺とシてくれればいい、何だったらケツでも貸す!だから……」
「……しょうがねえな。何があっても後悔すンなよ?」
 ヴァレリオは一呼吸置いてからヴィンセントに問う。そのあとにもう一言付け加えようとしたが喉まで出かかった所で飲み込んだ。
「お前の女癖が悪いのはさっき話してみて大体わかったし、俺も似たようなもんだから細けぇことでグダグダ言わねぇよ!」
「ハハッ……そらァ下手な女よりいいかも知れンな」

翌日・アルゴスハンガー
「VG!ちょっといいか!?」
「おう?なンだ!?」
 演習が終わり強化装備のままヴァレリオはヴィンセントのもとへ駆け寄る。ヴァレリオが目前まで来るとヴィンセントはヴァレリオとの距離を詰め、整備班がいる方向に持っていたクリップボードで顔を隠した。
「昨日あんだけ激しくヤったのによくもまあんな機動を……ACTVもすげえけどお前の管制能力も流石でしたよ、VG」
「まっ、欧州じゃあひでぇ時には一気に4~5人捌いた後に出撃とかしてたしな、そンなのと比べたら大したことじゃねえよ」
「4、5にん!!??まじっ……っつ……んんっ……くふっ……」
 ヴァレリオは何かを察しヴィンセントの唇を塞ぎ、そのまま舌を絡め取った。暫くその味を堪能してから、ヴァレリオは満足そうな顔で唇を離した。それとは裏腹にヴィンセントの顔は戸惑いを隠し切れてはいなかった。
「他の奴もいるンだ、あまりデカい声で囃し立てンな」
「わ……悪ぃ…… つい驚いちまってよ」
「そう言えばお前の事を探していた奴がいたぞ。早く行ってやれ」
「行ってやれってまた唐突だな。で、そいつは今どこにいるんだ」
「まだハンガーにいるンじゃね? 長身で割かし美形の、長髪の衛士だったぜ」
 ヴァレリオは他人事のように肩まで伸ばした髪を弄っていた。
 ヴィンセントはその言葉の意味を漸く理解し、目の前の翡翠の瞳をまっすぐ見つめた。やっと気付いたか、と言わんばかりにヴァレリオは視線を髪からヴィンセントの碧眼に焦点を合わせ、少年のように屈託のない笑顔を向けた。
「………………お前かっ!!」
「今夜零時、ナインローゼスの地下鉄入口で待ってる。 行き方は解るよな」
 お前とは一夜だけのつもりだったンだがな、と付け加えたヴァレリオの声色にはどことなく真面目さが見受けられた。待て、とヴィンセントが止める間もなく早々にヴァレリオは立ち去った。今抱いている苦しさがヴィンセントへの恋心なのか、或いは別の感情であったのかが解るのはまだ当分先だろうとヴァレリオは思った。

【了】】

2018/07/29  UP
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