トルナード襲来
「ハァ!? 例のパーツ今日来ねぇの? しょうがねぇな、とりあえずそっちの作業を止めて、あっちを手伝ってやってくれ!」
伍長はわかりました!と、俺に告げてストライク・イーグルの脚部へと向かっていった。なかなか進まない修復作業の憤りが声に出てしまっていたのか、アイツの顔はどこか申し訳なさそうだった。
「伍長、お前が悪いわけじゃない。そういう風に感じたんならすまない」
「……? ローウェル軍曹? 俺何か軍曹に怒らせるようなこと言いました? 機体の調整スケジュールだって多少の前後はありますし、あまり根詰めすぎるのもよくないですよ?」
「あ、ああ。悪い。な、何でもない……そうだよな。あんまり気負いすぎるのもよくねえな、ははは……」
***
やっと今日のノルマが終わった。本来の終了時間よりも三時間押した。寝たい。もうここで寝ていいっすかね? ハンガーの詰所だけど。
「ひあっ!?」
首元に冷たい何かが当たった。勢いで後ろを振り向く。眠気が一瞬トんだ気もするが、その後一気に疲労と眠気が襲ってきやがったので錯覚だろう。
「大丈夫か、お前疲れてンじゃねえの?」
深緑を孕んだ黒く長い髪に、笑顔を更に引き立てる睫毛、そしてぴったりとしたBDUのシャツ越しから浮き彫りになる彫刻のような腹筋――ストライク・イーグルの主ことVGが横の自販機で買ったコーラの缶を持ちながら俺の後ろで仁王立ちしていた。
「タカムラ中尉の長刀にお前ごとぶん回されたストライクのおかげで疲れてるんですが……」
「あはは…… って、ペイント弾が実戦用の長刀に勝てるかっての!」
「っていうか、お前はもう動いて大丈夫なのかよ?」
VGは先の演習で、タカムラ中尉の長刀にぶん回されて気を失っていた。機体からベイルアウトさせて無理矢理引っ張り出したことが、もう昔のことのように感じる。それだけ今日の整備が堪えたってことなんだが。
「メディカルチェックしたの?」
「異常なしだと。心配かけさせちまったけど、俺は大丈夫だぜ。前線防衛よかよっぽどマシだ」
VGのサムズアップに俺は安堵を覚える。
「よかった。お前ここに来る前はトーネードにナイフとフォーク装備して戦ってたって言ってたしな」
「トルナードにそんな装備はねぇよバーカ! イタリアdisンじゃねぇ……」
***
俺はハンガーで、VGと話してて……あれ? ここどこだよ? 周りを見渡してみるが、俺の部屋ではない。机にはVHSの山がいくつか出来ている。戦況ログか何かだろうか。というか、ここ狭くないか? 腿に何か当たってるんだけど…… 硬いような、柔らかいような、ナニか……?
「……あっ、ヴィンセント起きたん?」
薄暗い中に見慣れた顔。その顔にどこか色気のようなものを感じてしまった。百歩譲っても女には見え……ないけど、その長い髪と睫毛に一瞬ドキッとしてしまう。
「VG、ここは……?」
「俺の部屋」
「な、何で俺はここにいるんですかね……?」
「お前とハンガーで会って駄弁った後、机でそのまま寝ちゃったンだよ。単純にお前の部屋まで戻るより、俺の部屋の方が近かったから……そンだけ」
「は、はあ……っ!?」
気が付くと、VGが俺の股座に手を掛けていた。
カーゴパンツ越しに軽く竿を握られ、俺は息を詰めた。
「背負ってくンの大変だったんだぞ……にしてもお前さん、相当疲れてたみてェだな。硬ぇンが背中に当たって気になるのなンのって」
VGは器用に俺のナニをカーゴパンツから取り出す。性器が外気に触れた弾みで、ヒッ、と声が漏れる。
「ストライク、ボロボロにしちまってすまなかったな。俺が今、ヴィンセントに出来るのは、これくらいしかねぇけど……」
「お、お前が謝るなよ! 第一、昼間のことは俺にもお前にも予測が出来なかったことなんだし、そんなに気を落とすんじゃねえ!」
VGは体勢を変えて、俺の両脚の間に収まった。後ろめたいような、辛そうな顔をするVGを見たのは初めてだ。ああ、もう、頼むからそんな顔すんなよ、笑ってくれよ、って言おうとした矢先に、俺の下半身はパンツさえも脱がされていた。
「視姦されて興奮する質か」
「違っ……!」
VGが俺のちんこを見ている。勢いで虚勢を張っちまったけれど、薄暗い中、僅かに反射するエスメラルダのふたつの瞳に、俺自身を見られることは、そこまで不快には感じなかった。
「ヴィンセント、俺が好くさせてやるぜ」
「……ああっ!!」
VGは俺のちんこに口を付け、雁首のみを乳飲み子のように吸い始める。その行為に、そこから広がる快楽に、そしてたまに俺の目を見て、いつも見せるような屈託のない笑顔と、興奮気味に喘ぎを漏らすVG自身に、俺のちんこは一気に硬度を上げていく。疲れていることもあるのか、あっという間にちんこは勃起し尽くし、だらだらとカウパーが垂れていく。VGはタマを弄りながら竿から浮き出た筋や血管を舌でなぞっている。
VGはいつも「男は相手にしねェの!」って口にしてはいたが、実際の手管からして尋常ではないくらい男慣れしていることがわかる。俺も男とヤッたことはないけど、女と初めてヤったときはあんなに手際良くは出来なかった。なんて思っていたら、VGがまた俺の方を見て微笑み、俺のちんこから口を離す。VGの舌が性的興奮を孕んだ唾液と俺のちんこで繋がっているのが僅かに見えたかと思うと、程なくしてその糸は消え、おもむろにVGが髪をかき上げる。はあ、と一呼吸置いた。その瞬間だった。
「VG!!…… はぁっはぁっうっ! うはぁっ……! イ……イクぅ……!! あ、くっあぁう……」
俺はあいつの色気に酔ったのか、両手で無心にシーツを掴みながら、あっけなくイった。精液がべっとりとシャツにくっついている。VGに口でイかされてしまった事実に、射精後の倦怠感と喪失感だけではない、何か別の感情が渦巻いていた。
「ヴィンセント」
VGが傍に来て、俺を抱きしめる。心臓が跳ねる音がした、気がする。不意に手がVGの股に当たった。カーゴパンツの前がきつそうに張っている。俺のために抜いてくれたのだから、俺もVGを好くしてあげたい。その一心で、俺は気が付いたら、VGにキスをしていた。VGの口腔に舌を挿入すると、VGもそれに応えてくれたことが嬉しくて仕方がなかった。が、応えるどころか、いつの間にか俺の方が口腔を犯されていたけど。
「VG…… お前もこんなんで辛いんじゃねえの? 抜いていい?」
唇を離すと、俺は真っ先に訊いた。
「じゃあさ、お前のナカで抜かせてくれよ」
「えっ? それってもうセックスじゃん?」
「セックスだよ、駄目か?」
「あっ! その! 駄目じゃないけど、えっとですね……心の準備ってのが…… あっ!! おいVG!」
VGは再び体勢を変え、俺の脚をこじ開けた。VGはなまめかしい笑みを俺に見せつけながら、指で少しずつアナルを開いていく。初めてアナルを他者に触れられる感覚に、嬉しさと恥ずかしさとなんかよくわからない感情ばかりで……まるで……処女のめんどくさい女みたいじゃないか……! 何を期待しているんだ俺は!?
「あぅ……うぐっ……!!」
俺の中のめんどくさい処女があれこれ悶々としているうちに、VGの指が俺の中へと埋められて、アナルが「膣」になり代わる。痛みはないが、中を制圧されている感じがもの凄い。指一本だけなのに、少し苦しさを感じる。
「大丈夫か、ヴィンセント? 辛いならやめるけど」
「ああ、いいんだVG。やめないでくれ……」
辛いんだけど、それが苦じゃない。これもVGの手管の賜物なのだろうか? VGも耐えかねているのか、急くようにもう一本指が挿入ってくる。
「っあああ!!」
びくり、と背中が仰け反る。
「悪ぃ。俺も早くイきたいってのもあるからかな、お前が初めてだって解ってても、なんか巧くいかねぇな…… 処女の扱いなら慣れてるつもりではいたけどさ」
VGが困ったように笑う。
「VG……キていいよ。俺のナカで射精(だ)して」
VGの笑顔に報いたかった。それだけだった。
「ヴィンセント……ただでさえ俺のストライクで手こずらせちまったのに、これ以上お前さんに無理はさせられない。ゆっくりでいいって」
「お前のちんこはそう思ってねぇみてえだぜ。だから……俺とトんで欲しいんだ……」
VGのカーゴパンツがはち切れんばかりに自身の存在をアピールしているどころか、じわじわと布がカウパーで濡れてさえいる。お前も無理してんじゃん。
「じゃあ、ゆっくり挿入ていくから、痛かったら言えよ。何度でも言うけど、無理はすんな」
「それはお互い様だろ」
「それもそうだな」
VGはへッドボードからローションを取り出すと、俺のアナルに丁寧に塗っていく。熱を孕んだ下半身にローションの冷たさが心地いい。すぐにまた熱くなっちゃうんだろうけど。そしてVGもベルトとカーゴパンツを一気に下ろし、その全貌を露わにさせる。何度か更衣室に入った際にちらっと見たことはあったが、こうもまじまじとVGのちんこを見るのは初めてだ。イタ公然りと言うべきか、顔に似合わず、ファントムとか、バラライカのような第一世代機を思わせる、ごつくて安定感のある陰茎。これからこいつをナカに挿入れるのかと思うと、ちょっと怖じ気づいてしまう。とろとろとVGのちんこから腿からローションが伝っていた。
「い、挿入れるぞ」
「大丈夫だから ……VG,キて……」
俺が深く息を吐くと、VGのちんこがゆっくりと、確実に奥まで進行していく。一瞬全身が穿たれるような感覚に襲われるが、無理、ダメってほどのダメージではない。反射的にVGのちんこを締め付けていたが、それが良いのか、締め付ける度にVGが色めいた声を上げる。
程なくして、VGの陰茎がすべて俺の中に収まった。陰茎が挿入された分、胎が膨れているのがシャツ越しでもわかる。VGは俺のシャツをめくって、胎を撫でた。
「キツかったけど、全部挿入っちまったな」
ドクン、とVGのちんこが俺の胎のナカで勃起した。それに呼応するように、反射的にびくり、と背が跳ねた。
「VG……全部俺のナカで射精していいよ……」
「じゃあ、動くぞ」
俺はVGの肩にしがみつくと、VGが待ってましたと言わんばかりに腰を打ち付け始める。ずぷ、ぶぷっと濡れた音とともに陰茎が俺のナカを行った来たりし始める。
「……ぐっくっはぁっはぁっあ、うああっ……VG!!VGぃい!! やばい! い、いぃっ!! はぁふっ」
ぬぷっ、じゅぷ、と抜き挿しと同じ間隔で、切なそうな顔で俺のアナルを堪能するVGの前髪が激しく揺れている。その表情と長い髪に、俺のちんこは再び勃起すべきところまで勃起しきっていた。
「んぁあううぅあっぁあっあっ……ヴィ、ヴィンセントぉ……キツい……もっとキツく、締めて……!」
VGが自身のちんこを俺の最奥へと突きつけた。
「っあ、ヴィ、VG!! ヴィージー!! ふわっぁあっううぅううぅっふわっううぅ、ぃ、イく
うううううううう!!!!!!」
その反動で俺はVGを思い切り締め付けていた。
「んんっ! ヴィンセントぉ…… あっぁあっんんっ! ぁあっううぅあっあっ…… お、俺も、もう……!! ぐっはぁっはぁうううぅ!!!!!!」
今まで感じたことのない快楽が脳天からつま先まで駆け巡り、俺の記憶は一瞬ここでトんでいた。
気が付いたらバラライカやトーネードよろしくあれだけ猛々しかったVGのちんこが、いともあっさりと俺の中から抜けていった。VGが俺のナカで射精した精液も、なんか勿体ぶってしまって、アナルをきゅっと締めて留まらせてみたが、巧く力が入らず、あっけなく俺のナカからとろとろと流れてしまった。
VGが俺の隣に倒れ込んだ。乱れた前髪の間から覗く表情は満足そうで何よりだ。そして俺まで嬉しくなる。
「ヴィンセント…… ありがとうな。最高だった。またシようぜ」
「VG……俺もまたお前とシたい。いいかな」
VGは当たり前だろ、と言ってシャワールームへと向かっていった。
***
「お前は一発ヤっただけで女房面してくる女かよ」
以前俺はユウヤにそんなことを言った覚えがあるが、他人のこと言えなくなっちまったな。一発ヤってしまっただけで俺は……俺も……、VGから離れられなくなりそうで怖くなった。
これは一時の幸せな夢だと、俺は後処理のことも何もかも全て放り投げて、再び目を閉じる。
【fine】
2018/07/29
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