恐怖!自慰弾の怪
実戦演習後、シャワーを浴びるユウヤとヴァレリオ。強化装備の耐G機構から解放され、汗を流す気持ち良さも一入である。
しかし、ユウヤの傍らでシャワーを浴びつつ自慰行為に耽るヴァレリオの喘ぎに気が気ではない。しかもこれが初めてではなく、帰投後は大体この悪習に無理矢理付き合わされているのだ。だからと言って他のハンガーにシャワーを借りに行くわけにもいかず、場合によっては直後にデブリーフィングなども控えているため時間をずらしてシャワーを浴びるわけにもいかない。ヴァレリオ本人はユウヤを気遣って声を堪えているのであろうが、それさえも分かっていてやっているんじゃないかと却って変に疑ってしまっている。今日こそは、とユウヤはセパレート越しにのヴァレリオに極めて冷静に質す。
「VG」
「ふあっ!? ンだよユウヤいきなり話しかけンな!」
ヴァレリオの声はいつもよりも鼻にかかったような声である。濡れた長髪が色っぽいが、戦術機が性の対象であるユウヤにとっては全くどうでもよかった。シャワーの温度も相俟って心なしか顔が赤らんでいる。
「それはこっちの台詞だよ。何で俺の前でオナニー見せつけてんだよ」
「見せつけてねェよ! セパレートあンだろが!」
ヴァレリオはセパレートのガラスをコンコンと叩く。
「じゃあ何で帰投の度にここで!俺の前で!オナニーしてんだよ」
「ンなの戦闘後すぐのオナニーが一番気持ちいいからに決まってンだろ? ただでさえ戦闘中は興奮してるしな。 っていうか便所でションベンするンのと大して変わンねえだろ?」
言われてみればという気がしないでもないが、やっぱり違う気がする。何で俺の前なんだ、と改めて質す。
「だから1枚隔てりゃ大丈夫だって!っていうか着替えの時にも互いのチンコ見てるのに何で今更気にすンだよ? お前レオンやヴィンセントとかとオナニーの見せ合いとかしねえのかよ?」
何が大丈夫なんだよ、と言いながらうっすらとグルームレイク時代に似たようなことに遭遇したこと思い出していた。ユウヤも男である。ヴィンセントとオナニーの見せ合いの一回や二回はしている。だがそれは場にいる連中が合意の上でシコり合うのであって一方的に見せつけるのはどうなのか?と更に続けた。
「すまねえユウヤ……前線だと帰投後即ロッカールームでオナニーしてたこともあるから、せめてもの自重心からここでやってたンだが……。それに、お前さンも男ならこれ位は許してくれるって思ってよ……」
「や、俺も本当の前線なんてカムチャツカっきりだったから理解不足なところもあったと思う……。だけどなVG、お前ちゃんと処理してんのかも知んないけど、たまにタイルに精液残ってるぞ」
「なン……だと……」
「俺、一昨日の夜にシミュレータやってシャワールーム使った時に見ちまったんだよ……タイルに白いの残ってたの。しょーもないからデッキブラシでこすっといた」
大体ここを使う人間なんて限られている。ヴァレリオのナニは虚しく萎えていき、すまん、と一瞥した。
「でさあ、思い出したんだよ。まあこういうのってなんだかんだ米軍でもあったなあって」
「何だよやっぱり気にしてねーんじゃンよ」
「気にしてないなんて言ってねえし!」
「で、米軍でも帰投即シコがあったってのは?」
「ああ、その昔お前みたいにシャワールームでオナニーしすぎて排水溝詰まらせたクソ野郎がいたんだよ。精液って熱で固まるって言うし」
「えっ……マジ……?」
ヴァレリオの顔と陰茎からみるみるうちに血の気が引いていく音が、ユウヤには聞こえた気がした。
「ソイツがシコった排水溝の詰まったシャワールームで、中隊が一気に使ってて、水が流れないから更衣室まで水浸しにした時の奴の顔は今でも忘れられない、ヴィンセントは整備ってだけで駆り出されて泣きながら修理してたしな……」
そう、アイツが俺に執心するあまり、他の中隊の奴らにフルボッコにされていた顔は今でも思い出して笑っちまいそうな気分になる。
「ユウヤ……おいユウヤ……顔怖ぇぞ……」
かつてのバディであったレオン・クゼ少尉が自慰行為によって引き起こした排水溝事件の時の表情を思い出しているユウヤを見て、ヴァレリオは今度から更衣室でオナニーしようと固く決心するのであった。
【終劇】
2018/07/29
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