最終防衛線

愛の狩人と確率時空
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間接射撃

 無機質にピロピロと鳴り響く自室のコードレス・ホンに叩き起こされるヴィンセント。もう朝かと微睡みの中で時計を見やるが、まだまだ朝には程遠い。このままでも仕方がないので仕方なくベッドから出てやる。俺様はなんていい奴なんだ。夜中にイタ電するクソ野郎に親切に応対してやろうってんだからな!いい奴すぎて女に振られることもあるけど。
「……あっ……ヴィンセント……!! ちんこ……しゃぶってくれよ……
」  ――あっ、不審者だ。切ろう。全く、主任整備士様の睡眠時間無駄にさせんなっての!お前のアクティヴ・イーグルの四肢のネジ抜くぞ!と最初の喘ぎ声で声の主の特定が完了したため、ヴィンセントは受話器を壁掛けスタンドに戻す。
ピロピロピロピロピロピロ…………
 電子音は再び無情なまでに喚き散らしてくれる。ヴィンセントは振り向きざまに受話器を取った。
「おい、いい加減にしろよVG!」
「テレセクしよ」
「…………へ?」
 ヴァレリオは懇願するような、切なさを孕んだ声色で一言だけ告げた。
「取り敢えず横になって下脱げ、チンコ見せろ」
「いやあ見せろって言われたってあんた見えないでしょう?」
「俺には見える。おめえのチンコなんざ便所で、や、便所じゃなくとも、飽きるくらい見てるからな。お前だって、俺らの着替えの最中に更衣室来たりしてる癖に、お互い今更何を言うよ」
「えぇ……確かに着替えてる最中の更衣室には入るし、何度かお前ともシてるけどさあ……VGのちんこの皺までいちいち見てねえよ。 でかいのはわかるけど」
「まあいい、早くチンコ見せろ」
 ヴィンセントは困惑しながらベッドに転がり込むと、スウェットのズボンをパンツごと引きずり下ろした。陰茎に冷気が触れ、一瞬びくりと震えてしまう。
「VGは……」
「え? 何? 聞こえねェよ?」
 受話器の向こうのVGはどんな格好なんだ。多分、俺みたいに下は確実に脱いでるだろう。内心ドキドキしながら、興味半分で質したくなった。
「VGは今どんな格好なんだよ? 流石にちんこ位は出してるんだろうな?」
「あ、当たり前だろ……! 寧ろ全裸だ。もう我慢出来ないからお前のチンコしゃぶるぞ?」
「あ、ああ……」
 受話器越し、いや、確実に壁の二、三枚は隔てているであろう個室で、これからお前のチンコをしゃぶるぞという答えにちょっとおかしさを感じながらも、ヴァレリオが全裸であるという事実を確固たるものとしたヴィンセント自身が熱り勃ち始める。ヴァレリオは 受話器の前でバイブの陰茎を模した部分にわざとらしく音を立てながら口付けし始めた。
「ぐちゅ……じゅる…… ヴィンセントはぁ……こうやって、ちゅる……女のクリみてぇにカリ弄られながら……タマ揉まれンの好きだろぉ……? ぬちゃ……」
 閉じた瞼の中で、目を細めて僅かに口角を上げて煽るヴァレリオの姿が容易く再現される。ヴィンセントは受話器を自身の口元に置き、右手でカリを、左手でタマを揉みしだく。程なくして、小々波の如く小刻みに快楽がビクビクと押し寄せ始める。受話器越しにびちゃびちゃと濡らす音に混じって聴こえるヴァレリオの息遣いに、ヴィンセントの陰茎はあっという間に腹這いになる程、猛々しさに満ちた。
 勿論ヴァレリオも、ヴィンセントの陰茎に擬えたバイブのカリの部分を、普段ヴィンセントが悦ぶような間隔で責め立てながら唾液で濡らしていく。いつぞやか女にハメてちょっとした優越感に浸ろうとして買った、可愛らしいショッキングピンクのディルドは、何故か自分でハメて背徳感に浸るために使っていた。顔面に近づけた受話器越しから聞こえるヴィンセントの息の荒さに、ヴァレリオの腿からは先走りが伝う。
「ヴィ、VG………! もう射精ちゃう……!」
「ふふ…… なら、俺の雄膣内で射精してくれよ」
 ヴァレリオの小悪魔のような笑みが一瞬にしてヴィンセントの脳裏に転送される。触れてもいないのに、ヴィンセントのアナルの最奥がじわりと熱に浮かされるような感覚に陥る。ヴァレリオは尻を高く突き上げた状態で四つん這いになる。
「ヴィンセント…… キて……」
「あ、ああ」
 雌のような猫撫で声で誘い込む。とろとろと唾液混じりの陰茎を模した張型が、いやらしい音を立て、己が最奥にゆっくりと埋まっていく。
「ヴィンセント、半分挿入ったぜ。お前のチンコ、先走りですンげぇぬるぬるしてる……」
「VG、そう言ってお前いつも焦らすよな。もう射精すっていうか、射精そう」
 実際ヴィンセントはぎゅっと雁首を掴んだまま堪えていた。
「だーめ、奥で俺の前立腺突くまでイかせねえ」
「うぅ……」
 不在のヴィンセントが目前で涙を堪えて快楽に耐える姿に、ヴァレリオは更に昂る。早く貫かれたい気持ちを抑え、あくまでもゆっくりと押し進める。
「……VG」
「なんだ」
「そ、その……キス、していい?」
「ああ、いいぜ」
 とは言ってみたが、互いの物理的距離は少なくとも十数メートルは離れている。ヴィンセントは片手で寸止めをしつつ、ヴァレリオは片手で尚も自身を穿ちつつ、受話器越しにもう片方の指を挿入れて口腔内を互いに侵し合う。舌のような感触には程遠いが、互いがどうやって侵し合っているのかは、多少なりとも日々の戦闘で身に付いている。そんな互いの癖みたいなものを、互いに思い出しながらキスを交わす。
 ヴァレリオはその間も左手でバイブを奥へと誘っていた。一瞬、がくっと体勢が崩れそうになる。そして、じわじわと雄膣から全身へと快楽が広がっていく感覚に陥る。触ってもいない陰茎は腹部にぴったりと追随したままだ。
「ヴィンセント……全部……挿入ったぁ……」
「VG遅ぇよ……早くお前のナカで射精したくて仕方ないのに……」
「すまんな。たっぷり、射精してくれよな」
 ヴァレリオはバイブのスイッチを最大出力まで一気にブーストさせる。ヴィンセントの受話器からでもそれがしっかりと捉えられていた。ヴィンセントはヴァレリオの雄膣内の扇動を思い出しながら、陰茎からミルクを搾るように扱く。びくり、と背中が反射的に、大きく弓なりに反る。
「あっ、あ……VGのケツマンでイく、イぐ、っ、あ、ああああああ!!!!!!!! 射精てる!! せーしびゅーびゅーしてる!!!! あっ、あっ……!!!!!!」
 ヴィンセントの突撃砲から射出されたペイント弾は、垂直方向に射出された後、布団へと付着した。
 ヴァレリオも焦らした挙句、自身の余裕がなくなっていたらしく、片手で何度も雄膣から飛び出しそうになるバイブを押し戻すうちに、蠢くような絶頂の前兆に突入していた。
「ヴィンセントぉ……雄膣内、おめぇのチンコ、びくびくキてる……!! 胎ン中、ザーメンで一杯に……なっちまう……っふ、……あ、あ、っ、あぁーーーーっ…………!!!!!!!!」
 ヴァレリオを穿ち続けていたディルドは手をすり抜けてごっそりと雄膣から抜ける。ぽっかりと口を開けた後孔に冷たい空気が抜けていく。その感覚が快楽に拍車をかけ、射精感が増幅される。何とか手元のティッシュを掴み取り、自身の突撃砲の銃口に被せる。自身の射出したペイント弾の体温がティッシュを抑える手に伝わる。興奮を抑え切れず、本能的に喘ぎは漏れ、腰は激しく動いてしまう。射精が収まっても、その酔いを醒ましたくないがために、暫く腰の動きを止めることが出来ずにいた。
壊れたようにその動きが突然止まると、ヴァレリオはうつ伏せになり、冷めた目で精液を収めたティッシュをゴミ箱に投げるも、大きく反れて床に転がった。

 互いの部屋でセックスを交わし、絶頂を越えた二人の間に、妙な空気だけが残る。ヴァレリオが申し訳なさそうに口を開いた。
「ヴィンセント」
「……なんだよ、VG」
「おやすみ」
「おう、おやすみ」

 ヴィンセントが告げるとすぐ電話は切れた。改めてこの惨状を見回す。脱ぎっぱなしのスウェット、精液で汚れ、ぐちゃぐちゃになったシーツ、そしてコードレス・ホン。全く、下半身丸出しになって何やってんだか、とパンツも穿かずにコードレス・ホンを壁の定位置に戻す。そのままベッドに投身して再び微睡みに塗れようと思ったが、先のヴァレリオの声がやたらなまめかしく感じたのを思い出してしまい、陰茎が再び硬さを持ち始めていた。
「もう一回シコってから寝るか」

【了】

2018/07/29  UP
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