最終防衛線

愛の狩人と確率時空
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バッド・トリップ

「VG……VG……!! あたたっ……!!」
 ヴィンセントは傍らで眠りの深淵に落ちているヴァレリオに声を掛けるも、中々気付いて貰えない。必死に起こそうとするが、あまり大きな声では起こせない。というのも、数時間前の飲み会で、ヴィンセントお得意の中ジョッキを2秒で飲み干す通称「ビール・スロート」をユウヤとヴァレリオの制止をモノともせず、2セットもキメてしまったことにある。2秒で飲み干せは出来るが、一回キメたら翌日は一日中すこぶるダメになるという誰も得をしない技であった。声を出すだけでも頭に響くほど、ひどく酔っていたのだ。
 そんなヴィンセントを見兼ねてヴァレリオは部屋まで送ってやり、時間も遅いからここで寝ていくとヴィンセントとベッドを共にしていたのだった。
「VG……起きてくれよ……!!」
 ヴィンセントはヴァレリオの肩を揺さぶった。
「……ンだよ……? ヴィンセント……?」
 ヴィンセントに背を向けていたヴァレリオが徐ろに寝返る。と同時にはらはらと髪が動きに合わせて軽やかな音を立てた。
「ヴィー……ジー……、あのさ、ションベン……行きた……ぁ……あぁ……」
 言いかけたと同時にヴィンセントの尿道の最終防衛線が、じょばじょばとでかい音を立てながら崩壊し始める。
「ひぃ……やだ……、あ、ああっ、出ちゃった……!!」
 ヴァレリオは掛け布団を反射的に剥いだ。だがそれ以降は呆気に取られながら自身の方に迫って来る他人の体液にどうすることも出来ず、時間と共に自身のカーゴパンツにその体液の進行を許してしまっていた。
「ぁ……あっ、やだな、……俺、VGに見られながら……おしっこ、しちゃった……こんな姿で……俺……」
 鼻腔と大腿に生温く絡みつく尿の感覚はやはりどこか気持ち悪さが先行する。ヴィンセントは最初は驚いていたが、徐々に恍惚めいた表情と、喘ぎ声に変わっていった。
「……ぅ……ごめん……VG…… と、とまんねぇ……っていうか、なんか、気持ちよくて、止めたくねぇ……」
 快楽で涙声になっているヴィンセントは、ヴァレリオに痴態を晒しながら、心の何処かで排泄を見られることに快感を覚えてしまっていた。脚から背中まで濡れたスウェットは色が変わり、更に自身の興奮を煽る。徐々に陰茎から尿が収まってはいくが、それは勃起していっているためで、完全に膀胱の中から尿が抜け切っている訳ではなかった。
 ベッドに描かれたユーラシア大陸の戦禍に巻き込まれたヴァレリオは戸惑いながらも、ヴィンセントを抱き寄せ、優しく頭を撫でた。
「ま、まぁ……、大丈夫だよヴィンセント。俺だって大掛かりな作戦とかになると、普通に強化装備のナカでションベンくらいするし」
 ヴァレリオは自分で言っておきながらちょっと恥ずかしさを感じていた。衛士としては当たり前ではあるが、それを口にする恥ずかしさは実行為を上回っていた。
「VG……」
「なんだ?」
「VGに、抜いて……欲しいんだ……。勃っちゃってさ……」
「……わかった」
「えっ!? ちょっとVG……!?」
 ヴァレリオは快諾すると自身のカーゴパンツを脱ぎ始めた。ヴィンセントの表情に当てられたのか既に半勃ちしていた。
「俺も勃ってきたから……」
 ヴァレリオは恐る恐るヴィンセントのスウェットごと陰茎に軽く触れる。存外濡れた感覚も悪くない。そのまま布越しに扱いてやるとヴィンセントは嬌声をあげる。
「ん、んっ、……いいっ!! ……ぁ痛っ!」
 快楽の振れ幅が大きくなると、その分頭に響くことをヴィンセントは思い出す。だが頭痛が余韻のようにジーンと響き渡る感覚もまた興奮剤として作用していた。
「あー、無理はしなさンなよ? 」
 ヴァレリオはそんなヴィンセントを堪能しつつ、もう片方の手で自身を昂ぶらせる。
「やばい、VG、気持ちいい……! ひぃ、イくぅ!!!!」
 ヴィンセントは前屈み気味になると、濡れたスウェットに精を放った。興奮していた陰茎が収まりかけると、まだ膀胱内に残っていた尿がちょろちょろと出始めた。
「ぁ……あっ……あっ……や、だめぇ……!!」
 ヴィンセントは拒否の姿勢をとっているが、声色は快楽そのものであった。ヴァレリオはスウェットに這わせていた手をヴィンセントの下腹部に移す。まだアルコールが残っているのか膨れているのがわかる。
「ヴィンセント……気持ちいいか?」
 ヴァレリオはわざとらしく問い質す。だがその口調には悪意はなく、親が子に質す口調そのものだった。ヴィンセントはゆっくりと縦に頷く。ヴァレリオはそっとヴィンセントのスウェットを下げる。冷えたスウェットが剥ぎ取られ、素肌を晒す冷たさに追い打ちをかけられ、びくりと震える。ぐちゃぐちゃに濡れた下着には射精したばかりの精液と尿で溢れ、陰茎からは未だに尿が零れる。ヴァレリオは更にヴィンセントに近づくと、ヴィンセントの陰茎を自身の陰茎と擦り合わせる。ヴィンセントの精液と尿の残滓がヴァレリオに絡みつき、ヴァレリオの陰茎が体積を変え始める。
「ヴィンセント……あっ、あ、マンマって、呼んでっ……!」
「えっ? ……マンマ?! マンマのおちんぽもイキたいの? 」
「あっ……ああっ! イ、イキたい……んっ……!!」
 ヴィンセントは何となく状況把握し、右手はヴァレリオの陰茎に軽く触れ、顔を胸板に埋める。BDUの黒シャツを捲ると、舌で乳首の先端を転がすように舐め回す。
「ねぇ、マンマのおっぱいは……こんなに大きいのにミルク出ないの?」
 ヴィンセントは硬くなりかけた乳首を吸い始めると、ヴァレリオはその動きに合わせるようにびくびくと反応する。ヴィンセントを慰めていた余裕はもう見当たらない。
「マンマのミルクは……、ちんこからしか出ないンだ……っ、から、早く射精して欲しいな……。でも、一つだけ約束、してくれるか?」
「ふふ、なあに?」  ヴィンセントは待ち構えるように、ヴァレリオの陰茎をゆっくり扱きながら訊ねる。
「本当に、無茶だけはしてくれンな」
 ヴァレリオは厳しい声でヴィンセントに放った。有事の際、ヴィンセントを部屋まで運び込めるは体格的にもヴァレリオだけである。加えて、優秀な整備兵のスケジュールが崩れるとその皺寄せが衛士にまで及ぶのだ。今言うべきことじゃなかったかもしれないが、根が真面目なヴィンセントだからこそ言ってあげなければならないと、まさにヴァレリオの母性が先ん出ていたのだ。
「……わかったよ、マンマ」
ヴィンセントは拗ねた口調で返す。宥めるようにヴァレリオはヴィンセントの頭を再び優しく撫でてやった。ブロンドヘアがふわふわと揺れると、ヴィンセントは幼げな笑みを浮かべた。
「マンマは乳首がイイの? 」
 ヴィンセントは再度ヴァレリオの乳首を優しく貪り始める。硬さを孕んだ乳首は欲を交えて膨れている。と同時にヴァレリオの陰茎を先刻よりも強く扱いてやる。
「あ、あっ、ヴィン、チェ……!! ち、乳首……い、イイぜ……!!ぅ……くっ!! おちんぽミルク射精ちゃう……あああああっ!!!!」
 ヴァレリオは反射的に腰を振り、ヴィンセントに抱きつきながら、ヴィンセントの汚れた下着目がけて射精した。
「マンマのおちんぽミルク……いっぱい出たね! 俺のと一緒になってすっげえぐちゅぐちゅになっちゃった」
「……そうだな」
 ヴィンセントの言葉に息が荒くなる。精液が心なしか、女を抱いた時よりもずっと濃い気がしてならなかった。改めて、この突然の大惨事に興奮してしまったことに自分でも恐ろしさを感じて、急に萎えてしまった。
「VG……」
「どうした?」
 ヴィンセントに目線を合わせてやる。顔は未だ熱い。
「……VG、いつもよりすっげえいい顔してた。なんつうか,めちゃくちゃエッチな声だったし、こういうこと女ともしてんの?」
「や、俺は元々排泄欲と性欲は切り離してるから、スカトロじみたのはこれが初めてだ」
「へえ……、で、何でマンマだったんだよ?」
「その ……漏らした……ヴィンセントが……あンまりにも……可愛くて……つい……母性が……」
 ヴァレリオの顔が更に熱くなる。
「あぁ……ごめん。本当にお前には悪いことしたな。でも、また、こういうの……シちゃダメかな? すげぇ気持ちよかった」
「……時と場合と酒量を考えた上で許可する。 せめてホテルとか行こうな」
「えっいいの!? っ痛ぇ~~!!」
 ヴィンセントは跳ね起きようとしたが、アルコールが残っていたのが膀胱だけではなかったことを思い出して即座にその場に倒れた。
「もう飲みすぎンじゃねえぞ」
「わーったよ」
「このままだとどうしょもねえから取り敢えずシャワー浴びるわ、お前は身体拭いてやるから待ってろ」
「あいよ」
 ヴァレリオはヴィンセントに咎めるが、これを片付けるのが全部自分であることに愕然としつつ、取り敢えず吹っ飛ばした無事な掛け布団でどうにか寝るべく、思案しながらシャワーを浴びに行った。

【了】

2018/07/29  UP
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