虚無からの脱却・そして地獄へ

 あいとゆうきのおとぎばなし(ネタバレしかない)みんな大好きオルタ感想です。

 人が人の想いを紡ぎ、世界の寿命を少しだけ延ばした一人の少年と命を落とす少女たちの話。とても壮大な人生訓でした。
 まりもちゃんで三日三晩寝込んだ諌山先生は悪意を感じたと言ってたけど、あれはすべて元の世界へ戻すために必要なパーツの一つ一つだったと思ってます。 
 HSSTの飛来を止めて以降の、天元山の難民を見殺し、クーデターの将軍援護をしたことも、夕呼先生が脳髄を純夏だと暴露するタイミングも、すべてその順番でなければまた振り出しに戻ってしまうのではないかと思いました。ただそれを脳髄の純夏と霞はずっと観測していて、自分と武が結ばれるまでずっとループさせるというのもなかなかシビアというか、我儘だなあと感じました。その我儘の代償にファイナルエクストラで霞も悠陽も含めて「元の世界」を再構築したのは優しい子だなあと。純夏の思考ひとつで武とラブラブの世界だって作れたろうに、あの「10月22日」に悠陽と霞も含めて再構築ってのがとてもすごいというか、優しさというかを感じました。
 (オルタ世界の)10月22日から12月末まで、まりもちゃんから始まって死に行く人たちを沢山見送って気ました。誰もが奪われた地を、家族を取り戻したいとひたすら「個」の想いを抱きながら「公」の任務に挑むさまは、本当にカッコ良くて、その死のどれもに「意味」があった。それは事故かもしれないし、任務かもしれない。でもその死のすべてを経験しないと「正しいセカイ」を「選び取る」ことが出来ないのだ。白銀武にこれでもか!と言わんほどの過酷な「人生わからせ」と「適切な選択」をひたすらやらせてようやく世界が救われる。人生は常に選択の繰り返し。正しいか正しくないかは後々にならないとわからなけど、その時の最善を選ぶことはどこの世界でも一貫しているとは思うんです。

 これ何度か言ってますけど、中学の頃仁D読んでも全く靡かなくて免許もAT限定でいいや~って(当時ウテナ見てた癖に)言うてたのに、車買い替えるって言った途端に仁D読んで富士重の名機、R2を買ったはいいけど限定解除して一年半で32のMT乗り回すという、中学の頃の自分が今の自分を見たらどう思うんだろうという選択をしています。何を選んで何を捨てるか選択する「タイミング」ってのもまた大事になって来るんだろうなってのも感じました。その辺はTEにも通じるものがあったような気がする。

 冥夜と沙霧、どちらもエクストラだとやれ突飛だのどうしようもない男だのと言われましたが、立脚点を持つことでどちらも大きくキャラの立ち位置の意味合いが変わって来る(特に沙霧)の、すごいよなと。
 冥夜は何も変わっていないようにみえるけれど、立脚点が固まっている分、とてつなくカッコ良くて、立ち振る舞いも頼りがいのある女になったなあと思います。それがあるからか最期の最期にBETAにとらわれた時、武に頼んで「撃ってくれ!」と願う姿は立脚点も何もを失ったけれど、「一人の女の子」の願いが叶った瞬間の美しい死だと思いました。
 彩峰榊の死に際はとても性癖です。同一線上の正反対って百合だろうが薔薇だろうが関係なく好きなんですよね。初めて息が合った場所が死に場所なの、非常に最高ですね(言い方は最低かと)

 今自分が置かれている状況、白銀が一時元の世界に戻ってきて、元の世界をハチャメチャに歪ませてその責からオルタ世界に戻って来るその前日みたいな感じです。これから自分が成すべきことは周りに謝りまくって自己満足に浸ることではなく、ただひたすら自分が出来ること、やれることを貫くのみだと思ってます。逃げても責任は追ってくるのだから、立ち向かうしかないのです。そのための32なので。
 それができるかは分からないし、2021年現在、オリンピックと疫病でバカの一つ覚えみたく何もしない連中に辟易しながら、自国で足の引っ張り合いをして真面目な奴から潰されていく、こんなしょうもない国なんてなくなってしまえと心のどこかで思っているのはエゴか、生ぬるい世界で生きてるゆえの鈍さなのか。